能装束
能で使われる衣装を「能装束」といいます。能の美を代表するものですが、初期の能装束は質素なものでした。室町時代末期から徐々に絢爛豪華になり、能が武家の式楽となった江戸時代に形式が定まり、様式的にも完成しました。 |
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■能装束の種類 装束は着付け類、上着類、袴類に分けられます。演者は一番下に肌着をつけ、次に着付け、袴(着けない場合もある)、上着を着ます。 |
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着付け類 | 摺箔(すりはく)…無地の小袖に金や銀の箔で模様をつけたもの。 縫箔(ぬいはく)…刺繍と箔で模様をつけた小袖。 厚板(あついた)…地厚の織物で、力強い模様が施されている。 など |
上着類 | 唐織(からおり)…様々な色糸で模様が織り出されている小袖型の装束。 長絹(ちょうけん)…袖が広く、胸と袖部分に組紐がつけられている。 水衣(みずごろも)…生地の薄い広袖の装束で能独自のもの。 など |
袴類 | 大口(おおくち)…しっかりとした生地で作られた両横に広がった袴。 半切(はんぎり)…大口に似た袴で華麗な模様が施されている。 指貫(さしぬき)…裾に通してある紐を膝の下で閉めて袋状にする袴。 など |
■装束の着装法 能の扮装は面を中心に考えられ、次に装束が、曲目・色・図柄・役者の意図などによって組み合わされます。様々な種類の装束をいろいろな着方で違いを出していきます。
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着流し(きながし)…女性役の代表的な扮装で、袴を付けずに唐織などを着る方法。 腰巻き(こしまき)…小袖の上半身部分を袖を通さずに腰に巻き付ける方法。 肩脱ぎ(かたぬぎ)…長絹などの右袖を脱いで後に巻き込む方法。 など |
扮装のパターン |
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女性 | 天人 | 鬼女 | 老人 | 武将 | 龍神 |
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「摺箔」の着付けに「唐織」の上着を着流しにする。 | 「摺箔」の着付けに「縫箔」を腰巻きにし、長絹を着る。 | 三角形の鱗模様の「摺箔」の着付けに「縫箔」を腰巻きに着る。 | 「熨斗目」の着付けに「大口」の袴をはき、「水衣」の上着を着る。 | 「厚板」の着付けに「大口」をはき、「長絹」を肩脱ぎにする。 | 「厚板」に着付けに「半切」をはき、「法被」を肩脱ぎにする。 |
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巴 (ともえ) 前シテ |
羽衣 (はごろも) シテ |
道成寺 (どうじょうじ) 後シテ |
高砂 (たかさご) 前シテ |
清経 (きよつね) シテ |
春日龍神 (かすがりゅうじん) 後シテ |
装束の色:能装束には様々な色を使いますが、特に重要視されるのは紅(アカ)色です。紅が入るのものを「色入り」といい若い女性役に、入らないのを「色無し」といい中年以上の女性役に使われます。 |
仮面劇である能は全ての役が面をつけるのではありません。シテとツレの一部だけが面をつけ、ワキは面を用いません。起源的にワキは現実の人間、シテは神、又は精霊、亡霊、怨霊など人間以外の存在であるからだと言われています。女面や男面は後にできました。 シテが面をつけず舞台に出る事もあり〈直面(ひためん)〉、役者は〈直面〉という面をつけたつもりで演じます。 もちろん顔にメイクアップしたり、あらわな表情も禁じられています。また、間狂言の狂言方にも面を用いることがあります。 能面の種類は200以上ありますが、6種類に大別することができます。 |
−翁系− 「翁(おきな)」は能の中でも特別に神聖視された演目。翁面は、昔、神が老人の姿で舞った(翁舞)姿をあらわし、翁面をご神体とした神社もあり、能面の中では最も発生が古いといわれている。 |
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翁面(おきなめん) 普通の能面にはない特異な形で、上下にわかれた口をひもでつなぎ(切顎という)、まゆは丸い形をした白い房で飾られている。シテの面を白式の翁面(白式尉)といい、同じ形で黒い彩色が施されている三番三(三番叟とも)の面は、黒式の翁面(黒式尉)という。 「翁」で狂言方が使う。 |
−尉系− 神が仮の姿に身を変じてこの世に登場する老人の姿の時に使われる面。 尉面にも品格のある神性を表す面、庶民のたくましさを表す面などがある。 |
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小尉(こじょう) 脇能物の前シテに用いる。後場で神体になる品格のある老人で、表情がやわらかい。 「高砂(たかさご)」「老松(おいまつ)」等。 |
−男性系− 王朝の物語に登場する男性の主人公や平家の公達に使われる。 |
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中将(ちゅうじょう) 在原業平の顔を写したといわれる面で、眉間のしわと殿上眉に王朝貴族の憂愁が感じられる。 「融(とおる)」「清経(きよつね)」等 |
−女性系− 喜怒哀楽の表情がはっきりせず、中間的な表情に作られた面。面を照らしたり(あおむける)曇らせたり(うつむける)することで喜びや悲しみの表情を出します。 |
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小面(こおもて) 女性面の代表的な面。純真さを表すあどけない処女の顔で年の若い面。整った髪は若い女性を示す。品位もある。 「井筒(いづつ)」「羽衣(はごろも)」等 |
−鬼神系− 一般に邪悪、悪霊、汚れ、邪心等を追い払う怒りの表情をしている。天狗や神の化身を表し、鬼神でありながら牙がないのが特徴。 |
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大飛出(おおとびで) 眼球の飛び出ていることから来た名称で、全体を金色に塗り、躍動的な表現。陽性で豪快な神の面に用いる。 「賀茂(かも)」「国栖(くず)」等 |
−怨霊系− 戦で無念の死を遂げた武将、殺生をして死後成仏できない亡者、嫉妬に狂う女性の表情など、目が金色に塗られ、怪しさがある。 |
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般若(はんにゃ) 女の怨霊と悲しさを表現する面で、白眼全体を覆った金輪は鬼神に近い強さ、恐ろしさ、恨みと怒りを表している。角のある面は他に生成(なまなり)、蛇(じゃ)等がある。 「葵上(あおいのうえ)」「道成寺(どうじょうじ)」等 |
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